絶望の中で1週間が過ぎました。死ぬかも知れないと知りながら、DRは仕事に出かけて行きました。チェリーは、家に引きこもったままでした。今まであまり聞いたことの無かったメラノーマについて、インターネットで調べてみることにしました。
日本人には珍しいメラノーマですが、DRなどの白人種には死亡率の高さからか、かなり知られたガンだそうです。あまり詳しいデータが手に入らずに不安な中、ひとつのウエブサイトと出会いました。金魚さんというハンドル名の日本人の男性がメラノーマを発症し、西洋医学ではかなり後期と診断された方のサイトでした。メラノーマに気が付かずに、ホクロの切除処置を受け、その後の遠隔転移でメラノーマが発見されたそうです。彼のすごい点は、西洋医学の医者に出された彼の残存人生の日数に屈する事無く、日常生活の中にこそガンから救われる答えがあると確信して行動しているところでした。彼自身ガンについて勉強をして、良いと思うことを続けた結果、現在は体のどこにもガン細胞は見られない状態まで回復したそうです。1週間サンザン泣き続けたチェリーにも、小さな光が見えたようでした。金魚さんと出会い、本当に勇気が湧いてきました。まず最初に始めたことは、金魚さんも実施していると聞いたニンジンジュースでした。毎朝ニンジンジュースを作り、DRが飲むことを習慣づけるようになりました。幸いDRはニンジン大好きだったので、喜んで飲んでくれました。
外科手術の日にちが決まりました。緊急手術だと言われていたのに、実際には3週間も後になると病院に言われました。この日にちの設定には、不満が残りました。なぜなら、切除でメラノーマ発生源を刺激すると、更に進行が加速すると言われている点にありました。結局メラノーマを切除してから外科手術まで5週間もかかることになったのです。
手術までの3週間、通常の生活を続けていたDRでしたが、買い物に出かけた先のレジで並んでいた時、突然体の不調を感じました。先に車に戻って休むように促し、後で様子を見に行くと、DRは車の中で泣いていました。沢山の人に囲まれて並んでいたら、自分が幽霊のように感じたそうです。自分はもうこの世に存在していないように感じたとも言っていました。チェリーは大きな声で言いました。
『DRが死んだら、チェリーも死ぬ。チェリーのこと殺したいの?』
『殺したくないなら、生きる努力をしよう。二人で50年は一緒に生きよう。』
DRは、泣きながらうなづきました。
満月の夜、ワンコの散歩に出かけました。キャンディがトイレを済ましている間に、DRとロキシーは少し先のほうへ歩いていきました。満月に照らされた海沿いの道を、DRとロキシーが暗闇の方向へ歩いています。それを見ていたら、DRに置いてかれてしまいそうな気がして涙が出てきました。キャンディと全力疾走してDRの手を掴みました。絶対にこの手は離さないと、強く思いました。